中医学の「瞑眩(めいげん)」と土


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畑の土の好転反応

これまでに何度か、ブログで畑の土の好転反応について書いたことがありました。

好転反応というのは、長年化成肥料や農薬・除草剤を使用し続けた圃場を、ある年から急激に無施肥・無投薬とした場合に、転換2,3年目くらいに現れる極度の不作や病虫害といった現象で、一種の禁断症状のことです。

姉妹ブログ「百姓らぼ。」のこちらの記事で詳しく書きました。

今年は転換4年めになりますが、たしかに、去年の転換3年めには夏野菜を中心に不作、あるいは苗さえ育たない状況になり、今年はというと、まだ収量は少ないものの、去年と比べれば打って変わって野菜が育つようになりました。

こういったV字現象は、無施肥実践農家によって経験的にも知られているところで、上の記事にもあるように農学の研究者の方も指摘をされているところです。

そして、それを我が身でも体験したということになります。

東洋医学(中医学)を学ぶ

実は最近、東洋医学のうち、古代中国から連綿と続いてきた中医学の書籍を何冊か読んで勉強しています。

中医学に最初に触れたのは大学生のころ。大学3年次に1年間、中国は上海の大学に留学していたのですが、前半の半年は語学として中国語を学び、後半の半年は中国文学や中医学の授業に出ていました。

そこで学んだ「陰陽論」や「五行学説」といった中国古代の自然哲学の話を、いまでも朧気に覚えています。

僕は特に妻と一緒になってから健康に関心をもつようになり、生理学や分子生物学、栄養学の基礎を学んだり、西洋医学に根ざした現代医学に関する本もそれなりに読んできたつもりですが、どうしても本質的なレベルで納得が得られないというか、物足りなさを感じており、実際のところ身体の不調で病院に行っても、さほど深く診察せずに簡単に診断名がついたり、対症療法だけで終わってしまったりということも多々ありました。

もちろん西洋医学の英知は人類にとって不可欠なもので、例えばいま急性の脳疾患や心疾患に、あるいは事故で出血多量などに陥れば、まず現代医学の治療を望むことは言うまでもありません。

ただ、それは本来最後の砦であって、やはり不断の努力で健康な状態を維持できるに越したことはありませんし、そうあったほうがQOL(人生の質)は高いはずです。病気でない未病の状態であっても、本来出せるパフォーマンスが十分出せずに、仕事などの質も落ちてしまいますし、身体の不調は精神の不調にも繋がります。

そういった「予防医学」的な意識の芽生えもあって、今年に入ってから漢方・薬膳など、中医学の勉強を始めた、という経緯があります。

「瞑眩(めいげん)」とは

中医学を学ぶなかで初めて知った言葉が「瞑眩(めいげん)」という概念です。

瞑眩反応とも言うようですが、これは例えば、ある漢方を服用し始めたとき、症状が一時的に悪化し、何かしらの副作用を感じるような場合がある際に説明される言葉です。

その原因として、漢方が効いていることで身体の抵抗力・免疫力が再び働き始め、身体が病気と戦い始めることによって、それが何かしらの不調や苦痛として心身に表出する現象のことを指します。

この言葉を目にしたとき、まさに自分の畑で起きている現象に名前がついたような気がしました。

長年化成肥料や農薬が投入され続けた土では、微生物の多様性や活動性が自然本来のものではなくなり、土全体をひとつの生き物と捉えたときに、その生き物はある意味抵抗力を失っている状態と言えます(農薬が不可欠な状態)。

そんな状況から急に施肥も投薬もやめれば、例えればヘビースモーカーが急にタバコをやめたときにように、一種の禁断症状が現れるのは当然の帰結かもしれません。人体と言っても土と言っても、どちらも自然の一部である以上、共通するものがあると考えるほうが自然です。

肥料や農薬によって微生物の生命活動を抑えてきた圧力が急に緩んだために、微生物の総体でもある土が反発し暴走してしまう、ということでしょうか。

東洋思想と今後の農業

まだまだ中医学に関しては知らないことだらけですが、なんとなく、中医学は各論(応用編)で、それ以前に古代中国の自然哲学思想が総論として在り、それに基づけば、人体を対象とした中医学だけではなく、多くの生き物の総体とも言える「土」を論じることもできるのではないか、農業や栽培分野に応用することもできるのではないか、と思いました。

たまたま最近知ったことですが、「自然農」で有名な川口由一氏も、かつて東洋医学(中医学)を学ばれていたとか。中医学の古典である「傷寒論」などを学ばれ、漢方治療によって奥さんの筋腫も摘出なしに治癒されたとのことです。

いま、相補(補完)・代替医療として、現代医学の分野でも中医学の理論が有用なものとして注目され始めています。日本の医学部でも、そのカリキュラムの一部に組み込まれているという話も聞きます。

とはいえ、あらゆる代替療法も、それ単体だけで完璧ということはないと思いますので、車の両輪のように、科学的なアプローチである現代医学と併せて理解していくのが望ましいのではないかと思います。

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