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いま、世界中の名だたる企業(とくに金融機関や投資家から融資を受けて事業を行う大企業)が「脱炭素」に向けて、物凄い勢いで経営の大きな舵取りをしているようです。
その転換の大きなターニングポイントになったのは、2015年フランスはパリで行われた、第21回気候変動枠組条約締約国会議(通称COP21)で採択された「パリ協定」。
当条約加盟国196カ国すべてが賛同した枠組みとして歴史的瞬間と言われた協定です。
なぜ多くのグローバル企業が、このパリ協定の成立をきっかけに、一斉に「脱炭素」の動きを見せたのか。もちろん純粋に気候変動を阻止するという人道的動機もあったと思いますが、やはりビジネスライクに気候変動による災害リスクを回避するためだとか、世界中の投資家が従来の化石燃料依存企業に対する投資を控えるようになり、代わりに脱炭素に積極的に取り組む企業に投資するというSRI(社会的責任投資)あるいはESG投資の流れが無視できなかったからかと思います。
パリ協定のルールでは、今後世界で排出できる二酸化炭素の絶対量に事実上の上限が決められていて、現状のペースで化石燃料を燃やし続けると、あと25年ほどでその上限に達してしまい、それ以上の化石燃料の使用ができないことから残りの化石燃料は全く価値を失った座礁資産になってしまいます。
そうなれば痛手を被るのは化石燃料依存企業だけでなく、そういった企業に出資していた投資家や金融機関ということになるため、それを回避するためにどんどん投資先を脱炭素企業にシフトさせていっているんだと思います。
その時流もあってか、例えばアメリカのウォルマートやDHLといったグローバル企業も、自社で使用する電力を太陽光に切り替えたり、運搬車両をすべて電気自動車に変更するといった施策に出ています。
石油採掘で巨万の富を得たロックフェラーのファンドも、アメリカ石油大手のエクソンモービルの株式を売却するくらいなので、世界の脱炭素の流れは想像以上に大きく、誰にも止められない規模のものだと思います。
そこで、本題の農業ですが、脱炭素の時流の、農業への影響は正直どうなんでしょうか。
イオンやローソンといった大企業の農業参入や一部の大規模農場は別として、ほとんど日本の農業の担い手は小規模な家族主体の経営ですので、「投資」ともほぼ無縁であまり直接的な影響はないかもしれません。
ただ、先述したような、グローバル企業が脱炭素に走る理由は、単に融資面の課題だけではなくて、気候変動に起因する直接的な災害リスクの回避だったり、将来いざ化石燃料を原料とした製品(例えばガソリンなど)が高騰するリスクに対する回避も含まれています。
現にアメリカのウォルマートは、温暖化の影響で大きく発達した強力なハリケーンの影響で年間平均22億円の損害がでているとか。
そう考えれば、農業でも無縁とは言っていられません。日本で農作物や施設に被害をもたらす自然災害にも純粋に人災が含まれていることは見過ごせないと思います。
精査していないので思いつきレベルですが、農業活動を「生産・流通・販売」面に分けて脱炭素との関係を考えてみたいと思います。
まず生産面では、空気中の炭素を土壌に固定させ微生物のエネルギーとして使い循環させる、あるいは野焼きを避けて成り立つ農法を模索することが考えられそうです。
トウモロコシやソルゴーというイネ科の穀物は「C4」植物と言って、その他大多数の栽培作物より光合成能力が高く、より多くの炭素を固定することができるそうです。
いまシンフォニアファームで実践中のやり方がまさにそれで、炭素を土で循環させることで窒素その他ミネラルなども循環させるという考え方に依っています。
あと生産面で言えるのは、製造に大量の化石燃料が必要になる窒素化学肥料を使わないようにすることでしょうか。20kg1,500~2,000円ほどする時点で十分高いと思うのですが、将来化石燃料が高騰すればさらに入手しづらくなったり経費がかさんで経営を圧迫しないとも言い切れません。
流通面については、フードマイレージ的には「地産地消」が好ましいということになりそうです。身土不二?というのでしょうか。自分が生活している環境の気候条件で生育した旬の野菜を食べることは健康面でメリットがあるという考え方もあります。
ただ、気候条件的に地元で栽培できない品目も少なからずあると思いますので、そこは柔軟に考えていいかもしれません。
また、地産地消といえば、欧米で広まっているCSA(地域支援型農業)も今後日本で市民権を得ていくことになるかもですね。
生産者と消費者が連携し、多様な人材の参加によって実現される新たな農業のモデルとして、CSA(Community Supported Agriculture)が注目されています。
農研機構HPより http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/063139.html
CSAは、生産者と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約を通じて相互に支え合う仕組みです。CSAはアメリカで1980 年代に最初に始まったとされ、現在では欧米を中心に世界的な拡がりをみせています。
CSAは農作業や出荷作業などの農場運営に消費者が参加する特徴をもち、生産者と消費者が経営リスクを共有し、信頼に基づく対等な関係によって成立します。CSAはコミュニティ形成や有機農業の振興など、地域への多様な効果をもたらす新たな農業モデルとして注目されています。
最後に販売面。これは正直あまりイメージ湧きません。。
農家が農産物を直接小売する場合は直売所が考えられますが、その場合は照明などの電力源を自然再生エネルギーにするとか、くらいでしょうか。
以上、農業と脱炭素について思うところをつらつら書いてみました。
従来農法(化学肥料や化学合成農薬を使った慣行農法)を否定するようなつもりはまったくないのですが、個人的印象としては、日本の農家さんで気候変動や化石燃料依存リスクに対して本気で危機感をもっている方はごく少数のようです。とはいえ、これまで当たり前のように続けてきた従来農法を急に転換できるわけでもなく、なかなか難しい問題だと感じています。
僕の営農している兵庫県三田市は、農家による野焼きに対して日常的に市民から苦情が入る土地柄で、なんとか野焼きをせずに雑草などの炭素資材も有効に畑で使えるような農業を自分なりに実践していこうと思います。