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ベースとなる農法
こんにちは。シンフォニアファーム代表の伊藤祐介です。
今回は、僕と妻がこれから二人で農業を営んでいくうえでとても大事な点について綴っておきたい、と思います。
農業関係者以外の方にはちょっと馴染みのない話になりますが、半分、備忘録的なものになります。
就農するうえで新規就農者の皆がおこなう選択・・・、「農法」。
シンフォニアファームとしては、(将来的な展望として)肥料も農薬も使用しない、循環型の微生物を活かす農法を行っていきたいと考えています。
シンフォニアファームの圃場は唯一無二の環境にある以上、狭い意味での農法は唯一無二にならざるをえないですが、ベースとしては「炭素循環農法」という「考え方」をとっていきたいと考えています。
炭素循環農法についてはいつかの別記事に譲るとして、ここでは「無施肥・無投薬」について書いていきます。
無施肥
就農後は「無施肥・無投薬栽培」の土作りから挑戦しようと考えています。
作付けしながらの土づくりとなると、土づくりに専念する場合に比べて時間がかかるかもしれません。
「無投薬」はまだイメージしやすいかもしれませんが、「無施肥」はあまり馴染みがないのではないでしょうか。
肥料の定義が難しいところで、まだまだ勉強中ですが、あまり言葉にこだわらず、基本的には「微生物のエサになるもの(特に窒素に対する炭素比率の高い、高炭素有機物)を畑に投入して発酵型の土を目指し、逆に、土を腐敗型にする炭素比率の低い資材(有機質肥料や堆肥等含む)は控えるという考えでいます。
投入する粗大有機物は作物に対する施肥ではなく、あくまで微生物(まず何よりも糸状菌)へのエサです。畑のなかで糸状菌(キノコ菌など)を飼って、微生物たちに作物を育ててもらいます。
作物と微生物の共生関係は、まだまだ科学的には解明されておらず、エビデンスが揃っていないようですが、一部の科の作物(アブラナ科・アカザ科・タデ科など)を除いて、ほとんどの科の作物は菌根菌(糸状菌の類)が根に共生して、根圏に対して非常に広域な菌根ネットワークを形成すると言われています。
微生物に関することは、現時点の科学では1%も分かっていないようですが、菌根菌が寄り付かないアブラナ科植物の根にも共生などして養分を受け渡す微生物がいると言われています
多くの作物の成長に必須の元素は16~17種類あり、炭素・酸素・水素は空気・水から、硫黄はもともと日本の土壌には十分含まれている(火山国のため)と言われています。
カリウム・カルシウム・マグネシウム・その他ミネラル(Fe,Mn,Zn,Cu,Cl,Mo,B,Ni等)は、草木灰や刈草、野菜残渣などに含まれています。
残る窒素・リンは、エンドファイトである菌根菌が広域から作物の根っこまで届けると言われています。
ただ、菌根菌も生き物である以上、例えばリン酸過剰な土壌などではあまり働かなくなるようです。
窒素に限っていえば、そのほかにも土壌中の根粒菌を始めとする微生物の窒素固定によっても供給されますし、滅多にあることじゃないですが、窒素は落雷によっても土壌に固定されることがわかっています。
空気中の窒素を固定して作物に養分供給する窒素固定菌は、マメ科に共生する根粒菌が有名ですが、マメ科以外の科の作物にも窒素固定する微生物の存在も知られているようです。
その程度の養分量じゃあ、根菜を太らせたり、果菜類で連続して収穫していくのは難しい、という疑問もありますが、どんな野菜でも殆どは水分で、たとえば水分を抜いた乾物あたりの窒素の重量の比率は1.5%ほどです。
大玉トマト1個あたり200gとすると、95%ほどが水分ですので、乾物は10g。そのうちの1.5%の150mgが窒素です。
トマトの実は次々成るものですが、広域の菌根ネットワークによる供給や窒素固定菌による窒素固定、もともと土壌にストックされている有機態窒素(アミノ酸等)で上記の窒素量が確保できるのかどうか、正直僕などには検討がつきませんが、仮にそれが可能だったとしても、それほど不思議なことではないような気もします。
理由としては、化成肥料を散布する場合、菌根ネットワークの働きや微生物の窒素固定があまり期待できないため、(十分無機栄養分がある土によってただでさえ伸びずに)表面積の少ない根っこが触れている範囲からしか養分を吸えずに、それ以外のほとんどの肥料分は使われずに脱窒?するか雨水で流亡するかするため、化成肥料を散布する場合でも、実際に作物に使われるのはほんの一部ではないか、ということです。
慣行の場合、それなりの量の化成肥料を元肥として(あるいは追肥として)畝に散布するので、その殆どが作物に使われると錯覚して、「無肥料」や「無施肥」と聞くと反射的に、「(散布した)あれだけの肥料分をどうやって作物に供給するのか」と考えるのかもしれません。
多量元素のうち2番めに多く必要なのはリン酸ですが、それでも乾物を占める割合は0.2%ほどで、窒素の1.5%に比べて更に少なくなっています。
長々と書いてしまいましたが、結局これらは机上の空論かもしれません。
僕自身が実践して証明したわけでもありませんので、実際やってみないことには何もわかりません。
とはいえ、現に無施肥無投薬栽培で慣行並みの収量を上げている農家さんの実例が日本全国で複数あるのも事実。
それがそのままシンフォニアファームの圃場で再現できるかは別問題ですが、現実の証拠に勝るものはない、とも思っています。
あとは、無施肥栽培の有効性が学術的に解明されて、1日も早く理論的な裏付けができるようになることを祈ります。
無肥料栽培、実験中
僕はまだヒヨッコの農業研修生という立場ですが、今年の夏野菜から自分の畑で、無肥料栽培を試験的にやっています。
作目は以下のようなものです。
- トマト
- ピーマン
- ナス
- キュウリ
- スイカ
- メロン
- 枝豆
- 落花生
- きくいも
- いちじく
- 各種葉物
- ルバーブ
etc…
基本的には刈草などで有機物マルチをしています。さらに初夏ごろに、廃菌床というキノコ菌の培地を畝の表面に入れて、畝の表層で高炭素資材を分解してもらうことで炭素と窒素の循環を実現したいと考えています。
まだ実験をはじめて間もないですが、露地のトマトやナス・ピーマンは、品種にもよるものの、株は概ね慣行並に成長しており、すでにトマトも完熟したものも採れました。
葉を見る限り、今のところは窒素飢餓の様相(黄化など)は見当たりません。
ミニトマト
ピーマン
きくいも
スイスチャード
ピーマンやスイスチャードを収穫して食べましたが、施肥をしていないからか、硝酸態窒素に起因するようなエグミが感じられず、生で食べたピーマンも割と美味しかったです。
まだ始まったばかりですので、連続して収穫ができるか、それとも途中でへたってしまうのか分からないですが、失敗しても、そこからなにかを学べられればと思います(^^ゞ