炭素を土に還すということ


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炭素を混ぜる意味

シンフォニアファームでは、「炭素」を多く含んだ植物由来の資材を土に浅く混ぜ込んでいく、ということをしています。

目的は微生物を活性化させるため。

植物が光合成をして作り出す炭素化合物であるセルロースやヘミセルロース、難分解性のリグニンといった物質を一次分解できるのはバクテリアではなく菌類(カビやキノコの類)。

炭素分が菌類によってはじめに分解される際、その分解物や分泌物で土の粒子がつなぎ合わさり、入れ子状態の団粒構造というものができると言われています。

団粒構造が発達した畑では、雑草が生えにくく、水やりの回数が減ると言われますが、これにもちゃんと説明があります。


 

訳あって生える雑草

まず雑草ですが、雑草が生えてくるにも理由があって、微生物が殖えるのに必要な炭素分を光合成で作り(大気中二酸化炭素から固定)、枯れたあとに微生物の餌となって、微生物の働きで地球上のさまざまな元素を循環させていくのだと考えています。

微生物を殖やすために草が生えてくるので、土に多様な微生物がすでに存在していて世代交代を繰り返しているとしたら、雑草が生える必要性はそれほどないかもしれません。

例えばイネ科の草は比較的炭素固定能力が高く、「C4」と言われるトウモロコシやソルゴーは、とても強力に大気中の二酸化炭素を効率よく光合成により炭素固定します。

ですので、水田跡など痩せた土地でイネ科の雑草が最初によく生えてくるのは、少ない養分でも比較的生育しやすい吸肥力のあるイネ科だからこそ、とも言えそうです。

農家にとって一番頭を悩ませる雑草はイネ科のもの(ヒエやオシヒバ、メシヒバなど)という印象が個人的にはありますが、刈っても刈っても切り口からどんどん再生してきます(植物ホルモンのエチレンが再生を促進?)。

ですが、前述したように土に菌類をはじめとした微生物の多様性があり、バイオマス量も安定してくると、わざわざイネ科の雑草が生えてこなくても、農作業の邪魔になりにくい他の背の低い雑草などでも循環するようになると考えられます。

ただ、そのあたりの詳しいメカニズムはまだ不勉強ではっきり理解できていません。

また、土が団粒化すると表層で毛細管現象が起きにくくなります。土の粒子が入れ子状態で保水力があるので表層すぐ下の土は乾きにくい一方、表層の風の吹きすさぶ部分は当然乾燥するものの、粒子が大きいために毛細管現象が起きにくく、表層より下の水分を表層まで引っ張り上げるということが起きにくいため、乾燥するのが表層数センチ?のみとなり、表層の雑草の種が発芽しにくくなるため、これも団粒化した土壌で雑草が減る理由の一つかと思います。

 

潅水が減るのは?

さらには、降水が減っても乾くのが表層だけで済むため、潅水の手間が減るということも理屈としては成り立つかと思います。(極端な干ばつはまた別ですが)

トマトのような、地上部からも細毛で水分をある程度補給できる作物はさておき、植物が根っこから水分を吸い上げる機能についても、減潅水との関連がありそうです。

どちらかというと無施肥無防除によるものと言えそうですが、人為的に施肥をせず、薬剤散布などを行わない場合、土のなかの微生物が減少したり死滅したりすることがあまり考えられなくなります。

菌類のなかには、根っこに共生して植物から糖分やビタミンなどを受け取り、お返しに根っこの延長として菌糸を長く伸ばして土壌中から集めた水分やリンなどを根っこに供給することで共生する菌根菌といわれるものがあります。

陸上植物の大多数に共生可能と言われるVA菌根菌(AM菌)ですが、これが根部で共生した場合、その植物の根圏は、植物の根部固有範囲の何倍もの広域になると言われます。

菌根を形成しにくく根っこも短い化成肥料栽培に比べて、無施肥とした場合には植物は菌根含めかなり大きな表面積で養分を集めることができると推察できます。


 

その他のメリット

微生物の均衡のとれた環境が土のなかできれば、ほかにもいろいろとメリットがあると思います。

例えば刈草や剪定枝を燃やさずに済むということでしょうか。ガーデンシュレッダーやウッドチッパーなどがあれば剪定枝なども燃やさず細かくチップにし、刈った雑草も貴重な炭素源ですのでモアなどで細かく剪断して土の表層(酸素が行き届く範囲)に施用すれば微生物の活性化に役立ちます。

ちなみに二酸化炭素と地球温暖化(気候変動)の関連はいろいろと議論がありますが、燃やして直ちに大気中に二酸化炭素などとして放出せず、いったん土中に蓄積させることで、常時土壌中の炭素量がバッファーになりますので、温室効果ガス低減にも繋がります。

私は野焼きをしなくても済む農業を目指しているので、そういった面でもメリットがあると言えます。

 

いろいろ書きましたが、これはまだ頭のなかの理屈でしかないので、私自身が実践できるかどうかはまた別の問題です。

とはいえ、実際に炭素循環の考え方で無施肥無防除栽培をして農業専業で生計を立てておられる方の圃場も自分の目で観させて頂いたので、あくまで自然に基準を置いて自然に反することさえなければ、自然はすべてにおいて農家にとって楽な方に応えてくれると信じています。


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