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今回は、農家にとってよくわからない疑問の対象になりがちな、「農産物の機能性表示」について書いてみたいと思います。
結局、野菜を販売する際に直売所やネット上で、どこまで野菜や果物といった農産物(ここではとりあえず生鮮品)の機能性や健康効果を謳って良いものか、はっきりさせるために、消費者庁に直接電話アタックしてみました。
内容を忘れないように、備忘録がてら書かせて頂きます。読みづらい点、ご了承くださいm(_”_)m
経緯
僕は、今後いち農家として、あくまで生理学的な根拠に基づいて、できるだけ具体的な代謝のメカニズムを提示した上で、ひとの健康にとってメリットがあると考えられる野菜を栽培しつつ、その機能性に関する情報も積極的に発信していきたいと考えています。
もちろん、そのためには勉強という不断の努力が必要なのは言うまでもないですが。。
少し前、地元のJA直売所の農協職員さんに、どこまで農産物の機能性について書いていいものか聞いてみました。
ちょうど出荷したいと考えていた野菜のPOPを掲示したいと考えていたためです。
その質問に対しての回答は、「基本的に農産物の機能性の表示をすることは問題ないが、一定の根拠を併記してほしい」という趣旨でした。
ただ、POPは文字数も限られますし、メカニズムまで詳細に書くのは難しいので、売り場にパンフレットも置いて、そちらにメカニズム等詳細を書くなど、なにかしら工夫は必要かもしれません。
食品の機能性の表示に関わってくる法令としては、食品表示法や景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)などがあるようですが、故意は問題外として過失でも消費者を誤認させるようなことはあってはいけないので、念の為に消費者庁に直接お伺いをたてた次第です。
消費者庁からの回答
今回問い合わせたのは、消費者庁の「表示対策課」という部署です。
こちらのページにある消費者庁大代表の電話番号 03-3507-8800 から取り次いでもらいました。
以下、消費者庁の担当者の方からお聞きした内容ですが、僕個人の解釈になりますので、担当者の方の意向がそのまま伝わるとは限りません。できるだけ忠実に書かせていただきますが、その前提でお読み頂けると助かります。
さきに結論を書くと、少なくとも野菜を含めた農産物の機能性表示については、「例えば特定の病気を治療できる、薬要らずになるといった誤認を消費者に招かない範囲でなら、特に行政への届け出も必要なく任意で可能」という趣旨でした。
つまり、「消費者に誤解を招くレベルかそうでないか」は、個別に判断される(一定の明確な基準があるわけではない)ということです。
確かに、農産物というのは生き物ですし、例えば同じトマトでも、その機能性(含まれる栄養素の種類や量など)は、トマトの品種や生産地、気候や土壌の状態(栽培年度)などによって常に可変的なものですし、同時に同じ木から採れるトマトであっても違っているはずです。
そのトマト1個1個の成分調査をするなど、たとえ非破壊式検査であっても、手間とコストがかかりすぎてありえない話です。
そういった理由もあって、明確な基準を設けるというのは現実的ではないのだと思います。
担当者の話では、例えば、こうこうこういう理由で「便秘に効く」だとか、「血糖値を下げる」とか、「高血圧に効果がある」といったレベルであれば、景表法にひっかかる(不当表示に該当する)リスクは低いとのことでした。
これはあくまで「可能性」の話で、グレーゾーンの存在を否定しないということかと思います。
また、「一般消費者によく知られている効能については、表示しても問題ないと考えて差し支えない」といったことも仰っていましたが、結局、「一般消費者に機能性がよく知られている農産物リスト」なるものを行政が公開しているわけでもないので、ここは野菜を販売する農家や小売などが自己責任で判断するしかなさそうです(T_T)
ブログやSNSでの扱い
通常、商品の機能性表示をして栄養素や健康効果についてアピールするとしたら、直売所やマルシェのPOPだったり立て看板だったりが考えられますが、農家が運営している事業と関連のあるブログやSNSの場合はどうなんでしょう。
これについても、早く電話を切りたがっていそうな担当者に恐る恐る聞いてみました(笑)
こちらも結論からいうと、事業者が事業との関連で運営しているブログやSNSで発信する内容も、上記のPOPや看板といった販売場面で使われるものと同様の扱いになるそうです。
消費者庁の担当者の方も立場上、真っ向からこんな質問をされたら原則論を伝えるしかないと思いますが、いずれにせよ、消費者(生活者)に対して誤解を与えないという努力は、常にすべての事業者が心得ていかないといけないことです。
口頭は?
口頭で機能性を伝える場合がどうかについても聞いてみましたが、口頭も、POPや看板といった文章と同じ扱いとなります。
特に、マルシェなどの対面販売で、直接お客さんと会話をする場面では、誇大な表現を使わず、健康効果についても、そのメカニズムや根拠についても説明できるようにしておかないといけないなと思います。
罰則について
罰則については、景表法違反と考えられる案件があれば、まずは措置命令という名の「注意・指導」のようなものがいくそうです。それにも従わない場合には課徴金などの具体的な罰則があるということでした。
ちなみに下は、景表法違反に関する消費者庁のHPからの引用です。
景品表示法に違反する行為に対しては、措置命令などの措置が採られます。
景品表示法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、関連資料の収集、事業者への事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められた場合は、消費者庁は、当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる「措置命令」を行います。違反の事実が認められない場合であっても、違反のおそれのある行為がみられた場合は指導の措置が採られます。
また、事業者が不当表示をする行為をした場合、景品表示法第5条第3号に係るものを除き、消費者庁は、その他の要件を満たす限り、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じます(課徴金納付命令)。
最後に
以上、農産物の機能性表示がどこまで許されるのか、について、消費者庁に問い合わせた内容を中心に書かせて頂きました。
上記の考え方に対するご指摘などありましたら、ぜひご教示ください。
今回は農産物に限定して問い合わせたので、その他の食品については、残念ながら全く確認がとれていません。
ちなみに、なにか他の情報が得られるかもと思って農林水産省にも電話してみましたが、代表電話であっけなく「消費者庁担当になります」と一蹴されたので、「あ、そうなんですね(^^)」と言って電話を切りましたw